遺伝外来について
遺伝情報は、体の設計図であり、生涯変化しない情報です。
ゲノム解析技術の進歩により、わたしたちの病気の多くもまた、ゲノムによって引き起こされていることがわかってきました。
遺伝情報はがんの予防や治療に使うことが多いですが、薬の効きやすさ、高血圧や高脂血症などの生活習慣病、アルコールに対する耐性など、ご自身の体質を知る目的で検査することもできます。
検診やがん治療で受けた遺伝学的検査の結果をもう一度詳しく説明してほしい、家系に同じ病気の方が多いため相談したい、遺伝学的検査で何がわかるのか、などどのような事でも対応致します。
まずは、お気軽に遺伝外来を受診して頂ければと思います。
がんと遺伝の関係
がんは日本人の2人に1人が一生のうちに経験すると言われています。がんの発生には、遺伝要因と環境要因のどちらとも関与しますが、特に遺伝要因が発症に強く関与するがんが遺伝性のがん(遺伝性腫瘍)です。
遺伝性腫瘍の傾向
※当てはまると必ず遺伝性腫瘍というわけではありません
- 若年(40代以下など)でがんと診断された
- 複数回がんを経験したことがある(転移や再発は除く)
- めずらしいがんと診断された
- 同じがんのがん家族歴がある
全がん患者のうち約5%が遺伝性腫瘍であると報告されています。
遺伝性腫瘍はいくつも種類があり、それぞれがんの発症のリスクが上昇する臓器に違いがあります。乳がんも全体の約5%が遺伝性であると言われていますが、その遺伝性の乳がんのうち半分程度を占める遺伝性腫瘍が「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」です。
遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)について
HBOCはBRCA1とBRCA2というがん抑制遺伝子が関与し、乳がんや卵巣がん、前立腺がん、すい臓がんなどの発症リスクが上昇すると報告されています。HBOCかどうかは採血で行う遺伝学的検査で調べることができます。HBOCと診断することで、どこの臓器にどれくらいの確立でがんを発症しやすくなるのか判明するため、その情報をもとに特別ながん検診や乳房や卵巣のがん予防のための手術(リスク低減手術)を行うことができます。また、HBOCの診断は手術の方針や抗がん剤の選択などにおいて有益な情報となり、がんの治療に役立てられる可能性もあります。HBOCの遺伝学的検査や診療は、一定の条件を満たす場合に保険診療で行うことができます。検査や診療にかかる費用やご自身が保険診療で検査をできるかどうかは担当医にご確認ください。
HBOCと診断されると、両親、きょうだい、子どもは男女関係なくそれぞれ1/2の確立でHBOCの可能性があります。HBOCの遺伝学的検査はがんと診断されたことがない方でも受けることができ、検査結果に応じて特別ながん検診やリスク低減手術も対象となる場合があります。
女性の場合
乳房に対するがん予防と検査
18歳~ | 乳房の自己検診を行う |
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25~29歳 |
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30~75歳 |
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75歳以上 | 個別に話し合う |
- 乳がんの治療をされた方は、両方の乳房を切除した場合を除き、上記のように1年に1回、乳房造影MRI検査やマンモグラフィを継続します。
- 「リスク低減乳房切除術」(乳がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に乳房を切除する手術)の選択について、医療者と話し合います。
卵巣に対するがん予防と検査
- リスク低減卵管卵巣摘出術(卵巣がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に両方の卵巣および卵管を切除する手術)※1が、出産を終えた後、典型的には35~40歳で受けることが推奨されております。
BRCA2遺伝子の病的バリアントを有する場合は、卵巣がんの発症年齢が8~10年遅いため、40~45歳まで延期してもよいです。 - 手術を選択しない場合は、婦人科の医師に相談し、経腟超音波検査、腫瘍マーカー(血液検査)を30~35歳から考慮してもよいです。
男性の場合
乳房と前立腺に対するがん予防と検査
乳房 | 自己触診や乳房の異常所見(しこり、乳頭分泌など)に関する知識を身につける。※2 |
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前立腺 | 40歳からPSAスクリーニング検査を受けることが推奨される。※3 |
男性、女性共通
膵臓に対するがん予防と検査
膵臓がんの家族歴※4を認める場合、MRIまたは超音波内視鏡(EUS)を考慮します。
参照・補足
“一般社団法人日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構ホームページ一般の方向けパンフレット P11.12”参照。
著作権に配慮し掲載しております。
※1:リスク低減手術によってのみ、卵巣がんのリスクや卵巣がんによる死亡率を下げることが報告されています。経腟超音波検査や腫瘍マーカーの検査は、リスク低減卵管卵巣摘出術の代替法として妥当であることを示すエビデンスはありません。
※2:NCCNガイドラインには下記のように記載されております。
- 医療機関で1年に1回、乳房の視触診を受ける。
- 女性化乳房を認める場合、50歳あるいは家系内で最も若く男性で乳がんと診断された年齢から、年1回のマンモグラフィを考慮する。
※3:BRCAの病的バリアントを有する場合のカットオフ値3.0ng/mL、NCCNガイドラインではPSA検査に対して、BRCA2病的バリアント保持では「推奨」、BRCA1病的バリアント保持では「考慮」と記載されております。
※4:親、子、きょうだいに少なくとも1人膵臓がんを発症した方がいる場合をさします。
HBOCが疑われる臨床症状
- 60歳以下でトリプルネガティブタイプの乳がんと診断された
- 両側の乳がんなど、原発乳がんが2個以上(2回以上)あると診断された
- 男性で乳がんと診断された
- 家系内に乳がんや卵巣がんと診断された方が、自身を含め複数名いる
- 卵巣がん・卵管がん・腹膜がんと診断された
- 血縁者にすでにHBOCと診断されている方がいる
- 上記に当てはまる方が血縁者にいる
※ご自身に乳がんもしくは卵巣がんの診断歴がある場合で、上記を一つ以上満たす場合に保険診療で遺伝学的検査をうけることができます。がんの診断歴がない場合、自費の検査をご案内することも可能です。
遺伝カウンセリング外来について
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担当カウンセラー 赤木 究 医師 予約 完全予約制です。
お電話からご予約をお取りください。時間 第一・三木曜日午前 相談料
(完全自費)初回:
6,600円(税込)/ 60分
2回目~:
3,300円(税込)/ 30分相談料
(完全自費)3,300円(税込)/ 30分ごと 持ち物 問診票 -
赤木 究
- 資格
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- 臨床遺伝専門医・指導医
- 遺伝性腫瘍専門医・指導医
- 臨床検査管理医
- 難病指定医
- 日本遺伝性腫瘍学会評議員
- 日本癌学会評議員
- 日本人類遺伝学会評議員
- 日本遺伝カウンセリング学会評議員